
揚げあられ ― 香ばしさに隠れた日本の知恵
はじめに
寒い日、湯のみから立ち上る湯気に手をかざしながら一粒口に運ぶ。あるいは、大切な方への贈り物として箱を開けた瞬間にふわりと漂う香ばしさ。そんな場面に寄り添ってきたのが、あられというお菓子です。特に油で揚げた「揚げあられ」は、一度食べれば忘れられない軽やかさと旨みがあり、世代を問わず愛されてきました。ここでは「あられとは」という基本から、贈り物としての魅力、そして日々のおやつに根づいた存在感までを、少し肩の力を抜いて語ってみたいと思います。
あられとは ― 名前の由来と歩んできた道
あられは、もち米を使って作られる小粒の米菓です。語源は、炒った餅がはじける音や形が、冬に降る霰(あられ)に似ていたからとも言われています。
記録をたどれば、平安時代の書物には「あられ餅」や「玉あられ」という名前が登場します。当時貴重だった餅は神仏への供え物であり、その餅を無駄にすることなく「かきもち」や「あられ」にしていただくことは裕福な家庭ならではの食物でした。やがて暮らしの中に溶け込み、いまでは茶の間や贈答の場でも見かけるようになりました。千年を超えて食べ継がれてきた背景には、人を和ませる素朴さと、飽きのこない工夫があるのだと思います。
揚げあられ ― 噛むたびに広がる旨み
数あるあられの中でも「揚げあられ」は別格です。油で揚げることで、外はカリッと、中はふわっと軽い。ひと口かじれば、醤油の香ばしさや塩の旨みがじわりと広がり、もち米の甘さが後から追いかけてきます。
揚げることで調味料がよく染み込み、ひと粒の満足感が違います。熱いお茶と合わせるのもいいですが、日本酒やビールのお供としても格別です。
あられ お 菓子 ― 日常に根づく軽やかさ
洋菓子の甘さに比べ、あられは塩味が効いていてすっきり。小腹を満たすのにちょうど良いです。
・デスクワークの合間に一粒
・夕飯前のお茶うけに
・夜のくつろぎ時間に日本酒と一緒に
そんな使い方がしっくりきます。最近はグルテンフリーや低カロリーを気にする人も増えており、あられは「罪悪感のないお菓子」として再評価されています。子どもから年配の方まで安心して食べられる――これもまた、長く愛される理由です。
あられ ギフト ― 贈られてうれしい理由
あられがギフトに選ばれるのには、いくつかの理由があります。まず、上品な佇まい。化粧箱に並んだあられは、シンプルながら洗練されていて、贈答の席で安心して差し出せます。次に、誰にでも喜ばれる味。醤油や塩は世代を問わず馴染みがあり、甘すぎないので幅広い層に支持されます。
お中元やお歳暮、結婚や出産の内祝い、さらには法事のお供えまで、あられは幅広い場面に活躍してきました。まさに日本の贈答文化に寄り添うお菓子だと言えます。
日乃本米菓製造のこだわり
茨城県那珂市で90年あまり、私たち日乃本米菓製造はもち米本来の力を引き出すことに専念して参りました。精米した米をすぐに仕込み、職人が火加減を見極めながら揚げる。機械だけに任せず、五感を使った工程を残すことで、ひと粒に深みが生まれます。
さらに、素材の旨みを大切にし、手土産やギフトとして選ばれる商品づくりを続けています。