
日本酒「おかげさま純米大吟醸」とのマリアージュ
あられと酒の邂逅
― 日乃本米菓と「おかげさま純米大吟醸」が紡ぐ、和のマリアージュ ―

穏やかな夜。窓を開ければ、季節の風がやさしく通り抜ける。そんな静かなひとときにふさわしいのは、華やかすぎず、それでいて確かな豊かさをそっと届けてくれる一杯と一品の出会い。伊勢の清き水と杜氏の技が生んだ「おかげさま純米大吟醸」、そして茨城・那珂の地で丁寧に焼き上げられた日乃本米菓製造のあられ。異なる風土で生まれたふたつが、口の中で重なり合う瞬間に宿るのは、日本の心そのものだ。
「おかげさま純米大吟醸」は、伊勢神宮のお膝元である株式会社伊勢萬が手がける逸品である。精米歩合40%まで磨き上げられた山田錦を用い、米の持つ甘みとふくらみを最大限に引き出しつつ、驚くほど透明感のある後口で締めるその味わいは、まさに“日本酒の芸術”と呼ぶにふさわしい。
この酒が、世界最大級の酒類コンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2022」でゴールドメダルに輝いたのも、偶然ではない。538点の純米大吟醸がひしめく中で、23点のみに与えられた栄誉。
さらにゴールドメダルの中でも特に優れた銘柄に贈られるトロフィーも受賞した。日本酒を知る人なら、その格の高さに思わず頷くはずだ。
一方、日乃本米菓製造は昭和8年創業。90年にわたり、あられ・おかきという素朴なおやつに“ひたむきさ”を込め続けてきた老舗である。使うのは国産のもち米のみ。米の旨みを逃がさぬよう、乾燥から焼き上げまで手間を惜しまず、カリッと香ばしく、ふっくらと仕上げる職人の技が光る。
本日、ふと手に取ったのは、「杵もち揚 しお味」。指先に伝わる軽やかな質感。ひと口かじれば、カリッとした歯ざわりとともに、伯方の塩のまろやかな塩気が広がり、続いてもち米本来のふくよかな甘みがじんわりと膨らんでいく。その余韻にそっと寄り添うように、「おかげさま純米大吟醸」をひと口――酒と米菓、ふたつの味が静かに重なり合い、心の奥にまでしみ渡っていく。そして、その余韻を引き取るように、また日本酒を口に含む。
冷えた酒はまるで水のように滑らかだが、しっかりとした旨みを芯に感じさせ、さきほどのあられの塩気と調和しながら、やがてすっと消えてゆく。
次は、「杵もち揚 しお味」をトースターで軽く炙る。まるで揚げたてのよう。香ばしさが際立った瞬間に口へ運ぶと、塩のやさしい輪郭ともち米の甘みがふわりと広がる。そこへ、キリッと冷えた「おかげさま純米大吟醸」をひと口。まるで計算されたかのように交わるその相性に、静かな感動が広がる。
さらに、「こがし餅」をひと口。対馬産の「浜御塩」が生むまろやかな塩気と酒がその余韻をふんわりと包み込む。甘みと旨味、そして香ばしさのグラデーション。まるで、あられと酒が静かに寄り添い、舌の上でひとつの余韻を紡いるかのようだ。


